言葉は、家庭を耕す「こやし」

こころの宝

王貞治さんが、若き日にコーチの荒川博氏から徹底的に鍛えられ、世界のホームラン王となった逸話は有名です。

きっかけは、入団三年目のシーズンを終えた時。それまで思うように結果を出せずにいた王さんに、荒川氏はマンツーマンで厳しい特訓を課します。


練習は他の選手が帰った後の夜遅くから深夜まで続き、時には音を上げそうになるほどでした。


それでも荒川氏は「ホームラン王を獲るんだろ」「三冠王を獲るんだろ」と、事あるごとに王さんの心へ語りかけ続けます。最初は嫌々やっていた王さんも、やがて自分から「もっとお願いします」と練習を求めるようになり、その年ついにホームラン王と打点王の二冠を獲得しました。

言葉によって選手の気持ちを揺さぶり、やる気を引き出す。それこそが指導者に必要な力だと、荒川氏は身をもって教えてくれました。


これは、家庭の中にもそのまま通じる話だと思います。

言葉は、人間にだけ与えられた、人と人とを繋ぐ道具です。

家庭の中では、家族の心と心を結びとめる、かけがえのない役割を果たしてくれます。朝の「おはよう」、帰ってきた時の「おかえり」、何気ない一言の声掛け。その積み重ねこそが、お子さんの安心感や自己肯定感を静かに育てていきます。


「声は肥」という言葉があります。

肥料が土を豊かにし作物を育てるように、日々の声掛けは子どもの心を耕し、成長させる糧になるのです。

厳しい言葉より先に、まずは「暖かい息の言葉」を。

それが、家庭の温かさを知り、親子の情を深め、親や兄弟、周りの人を思いやれる大人へと育っていく、確かな一歩になると信じています。


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